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久米明 成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―

経済成長が達成できなくなったとき経済政策の目的や理念はいかにあるべきか。そんなテーマについて「政治哲学・経済哲学・法哲学などを専攻する若手研究者をメンバーとし」研究会が組織され、そこでの議論やメンバーの関連論文をまとめたのが本書である(中野剛志氏の「序」より)。論者17人は13人が大学の研究者で最年長が42歳、4人は経済官僚(※中野氏はこっちに含めてカウント)という構成。最悪想定シナリオという考え方自体はもちろん重要であるし、この理念をとればこうなるよという大枠の話も結構。しかし高度経済成長なくんば大停滞という二択はどうなのか。名目GDPを成長させられなかったこれまでを単に前提/出発点として政策の失敗を子細に検討せず、せいぜい「構造改革」やら「新自由主義」「グローバリズム」「人口減少・少子化」を云々する程度とは情けない。…とは題名と論者の顔ぶれで想定できた。集められた「気鋭の論客」(帯より)は上記の通り「政治哲学・経済哲学・法哲学など」の思想屋と経産省や旧通産省の官僚。マクロ経済学や厚生経済学、国際貿易や金融などの専門家はゼロ。それで編者は「具体策の提言に乏しいという批判は(中略)一切受け入れるつもりはない」と居直るのだから呆れる。さすが『TPP亡国論』の著者というべきか。ただし大屋雄裕氏の原稿は価値があった。氏の論考は、経済のパイが縮小する中で国家の配慮にあずかれる人の範囲をいかに定めるかという観点から国民・市民概念を再検討するもので、相変わらず実に明快。座談会でも、原理論を説いても大風呂敷を広げないのがよい。安藤馨氏の論文も幸福を感じるとはどういうことかのすっきりした原理論でためになった。中野氏の「これからの日本において必要なのは(中略)賢しらな政策提言や制度設計などではなく、経済政策を根本から支える強靱な思想」(p31)という放言に心底げんなりし、大屋氏と安藤氏の論考は興味深く、値段も勘案して星三つ。 成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン― 関連情報

久米明 朗読は楽しからずや

 独り閉じこもり読書していると、もし「朗読してみよ」言われたら、きっと尻込みするに違いない。そんな目に合わなくても、すばらしい、または、気に入った文章に出くわすと、「朗読したくなる」時がある。そんな時は自己流で「音読すればいい」だろうが、もしも傍に人がいて、または「人前で朗読する」ことになった時、本書を読んでいるのといないのとでは、違いも出て来よう。 まずは、腹から声を出す。口先でもごもご言うのではない。口を大きく開けて思いきり声を出す基本を大切にする。努力すれば暗く鈍重なダミ声も、軽快にリズミカルな声に変えることもできる。腹式呼吸法を会得することから始まる。  本書は六十年にわたるベテラン朗読専門家の手ほどきが語られている。朗読指導の実際、実行例である。われわれの多くは、朗読を専門にするわけでなく、少し朗読がうまくなりたいと思う者が普通ではなかろうか。子どもに聞かせるくらいはありうるとして、本書付録のCDは森鴎外の「山椒大夫」と芥川龍之介の「トロッコ」の抜粋である。作品には作者の心が秘められている。「作者の自作朗読」ではなく、声優久米明の朗読なのだが、その作品内容に通暁して、しんみりと聴かせる魅力がある。なんでもない表現のようで、実に含蓄がある。  朗読の真髄は「何を伝えるか」ではなく、「何故伝えるか」であるという。何を訴えようとしているか、それを念頭に朗読を自らやってみたい。その心がじーんと伝わってくる、その悦楽こそ朗読の醍醐味ではなかろうか。 静かなひととき、朗読の楽しみに浸りたいものである。 朗読は楽しからずや 関連情報

久米明 怪奇十三夜 DVD-BOX

 昭和46年怪談テレビ時代劇作品で、日活芸能株式会社協力のユニオン映画株式会社制作で全13話です。第7話「怪談悲恋の舞扇」は欠番となっています。私は、民放で午後1時から?とそして何年か後に深夜にも再放送で観て、凄く怖く強烈な印象が残っていました。そして、何十年後かに、CSのホラーTVと時代劇専門チャンネルで放送されました。その時は、もちろん全話ノーカットです。「作品のオリジナリティー・製作意図を尊重し、オリジナルのまま放送」とちゃんと表示されています。しかし、商品化に当たって第7話がなぜ欠番になったのか、それは冒頭の久米明氏のナレーションにありました。ナレーションでは、「静かに無常の有様を 思えばこの世は仮の宿 生者必滅会者定離 老少不定は世の習い 三世を悟る御仏も 逃れがたきは無常なり あ〜無常の風 ひとたび吹きて憂いの露 長く消えぬれば哀れこの世の別れにて 耳は聞こえず目は見えず 舌は閉じられ物言えず」とあるためです。これが欠番なら、勝新太郎の座頭市シリーズは全作品完全アウトでしょう。各話のストーリーは、他の方が書かれていますので省略します。私の中で、お勧めは第2話「番町皿屋敷」、第4話「妖怪血染めの櫛」、第8話「女の冷たい手」、第13話「変幻 玉虫屋敷の怪」です。第6話「おんな怨霊舟」はストーリ的には今一かもしれませんが、監督は石井輝男。吉田輝雄に『キイハンター』ゲストでお馴染み美人の原良子が出演されていましたので、個人的には満足です。音楽は、牧野由多可氏でテーマ曲メロディーはいいし、奇怪でおどろおどろしいBGMもあり最高でした。第2話で、青山播磨役の中尾彬がお菊役の藤田弓子を手討ちにするスローシーンでは、上記BGMが約35秒も効果音なしで聴けます。是非、『怪奇十三夜』と『日本名作怪談劇場』(2作品とも音楽は牧野由多可氏)のカップリングでBGMのCD化をしてほしい。音楽的には、冬木透氏の『怪談』はテーマ曲のみまあまあ気に入ってますが、他のBGMは『セブン』に似たような曲もあり全て今一つという感じでした。ストーリ、音楽とも上記2作品と比較して劣っています(私的感想)。この他に怪談映画音楽には、背筋も凍る不気味なBGMを作曲された鏑木創氏の昭和43年松竹映画『怪談残酷物語』のテーマM1があります。不気味な電気サックスのメロディーにオカリナや三味線が絡み合う曲で、土曜ワイド劇場の天知茂『江戸川乱歩の美女シリーズ』に頻繁に流用されお馴染みだと思います。またもや愚痴になりますが、サントラBGMのCD化にあたって、サウンドトラック・リスナーズ・コミニュケーションズ(SLC)やA音クラブ(日本映像音楽倶楽部で発売元はビクター)が過去に企画発売されたような路線方向の復活を強く望んでいます。  怪奇十三夜 DVD-BOX 関連情報




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