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鉛筆部隊 鉛筆部隊と特攻隊―もうひとつの戦史

戦闘機、攻撃機等に爆弾を積み、敵艦に体当たり攻撃を行う「特攻隊」。戦争最末期にいくつかの部隊は本土より燃料などが比較的豊富だった満州(中国東北部)で編成・訓練され、首都圏や中部の航空機メーカーの工場で必要な改造などを行い、九州の基地から沖縄方面に出撃した。数年前、満州の放送局がラジオ放送のため録音した出撃する隊員のレコード音声がNHKのテレビ番組で紹介していた。 きむらけんさんの『鉛筆部隊と特攻隊』に、同じ登場人物が出てくる。かつて多くの文士が住んだ下北沢(東京都世田谷区)の文化史を探訪し記録しているきむらさんは、代沢小学校の信州松本浅間温泉(長野県)への集団疎開の歴史に行き当たり、当時の児童たちにインタビューを重ねる。そうするうち、同じ温泉に満州から岐阜の各務原基地に向かった複数の部隊が、信州松本に飛来し、しばらくの間浅間温泉に滞在し、疎開児童たちとふれあった歴史を知る。 そうした時間を持ったのは、特攻隊員としては極めて珍しいケースだそうだ。子どもたち、家族、特攻隊員、現地の子どもたちや宿の人々。昭和8年生まれの私の亡父も代沢小に在籍し、家族疎開で山形の米沢に行っていたが、もし学童疎開組に入っていたら、終戦時の6年生としてこのドラマの端に参加していたはずであることもあり、興味深く読んだ。 現在も特攻隊の故地などに探求の旅行をつづけるきむら氏の探求心、人を見る温かい目、ときどきのぞくユーモア。インターネットという現代的な存在が、60年以上前の人々の記憶や品々を結びつける大きな武器になった様子も興味深い。特攻隊が話題になれば、賛美したり、あるいは政治的な戦争批判に流れる可能性があるが、きむら氏の静かな語りは、物語の登場人物たちの平和を願う等身大の姿を読者に伝えてくれていると思う。 ぜひご一読をお薦めしたい。 鉛筆部隊と特攻隊―もうひとつの戦史 関連情報




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