筆者の個人的な思想や問題提起であるとかそういったものをあまり感じさせず、ただ淡々と各種カルト団体へ取材したり潜入したりした経緯や、起こった出来事を記している。取材体験記のあとに、その団体への分析なり総括的な文章なりがだらだらと書かれていることもなく、次の行から即、別な団体への潜入記が始まる。また、筆者の姿勢や文章が、若干不遜というか、少し茶化しているような雰囲気を僅かに醸しているのも、読み手によっては気になるかもしれない。いわばただの体験談に近いものであり、ジャーナリズムとしては物足りないものを感じる向きもあろうかと思う。ただこの書はタイトルからして「これこれこういう団体を『取材』したら『こういうこと』が起こりましたよ」という内容を記したものであるということを明確にしているので、そういう意味ではお題に偽り無しかと思う。尚、各種カルト団体の生い立ちやその後の発展・衰退の経緯や今現在の状況などのデータは簡素ながらも正確に説明されており、そういった裏取り調査には手を抜いていないことも念の為強調しておきたい。私はたまたま偶然にも、この書にも詳しく書かれている然る団体に旧知の人物が極めて深く関わってしまい、大変に迷惑した経験がある(この筆者からの取材要請は無かったと記憶するが、主たる報道機関の多くからネットニュースの類まで、あらゆる筋から取材を望まれた。全て断ったが)。家人の安全を確保するため民間警備の手配や警察との連携、周辺への周知などで大変に消耗した苦い経験である。その時に味わった感情というのは一般によく言われる「恐怖」や「恐ろしい」というものも多少はあったのだが、一番強く感じ、且つ事件後も長いあいだ苛まれた感情は「とにかくこいつらめんどくせえなあ」というのと「なに考えてるか全然わけわからん」というものだった。諸事情あってこの手のカルトや新興宗教を扱った報道・出版物は可能な限り目を通すようにしているが、信者の足抜けに奔走する専門家(ご苦労には全面的に敬意を表します)や著名ジャーナリストなどの為した書物ではなかなか私が味わったこの漠然とした「めんどくさい」「わけわからん」がうまく描かれているものに出会えなかった。個人的には、正直、社会的な背景であるとか心理学的な分析とか、そういったものはもう食傷気味だ。その点においてはこの書は過去最高に私の気分を代弁してくれている。筆者の心理がことさらに記述されているわけではないのだが、この書を最後まで読めば、多くの方が「こいつらめんどくせえなあ」と感じて頂けるのではないかと思う。そういった意味でのリアリティを望んでいる方には、最高にオススメである。 「カルト宗教」取材したらこうだった (宝島社新書) 関連情報
10年以上前、Toshiが守谷香、MASAYAと出てたテレビ番組を偶然見てたのですが、そのときは、3人の言動にかなり違和感や怒りを覚えた記憶があります。まさかその裏ではこんなことが行われてたとは驚愕です。。。詳しい内容は省きますが、他の方も書いてるように、感受性が豊かで影響を受けやすい人なら?かなりトラウマになりそうな内容なので、その点読む前に気をつけるべきだと・・・この本のいいところは、作者のtoshiが自分にも非があること、自分がかなり弱い人間であることを認めたうえで、そこから一歩も逃げないで描いてあることです。もっともっと早い段階で抜けられたはず、何やってんだよtoshi・・・って言いたくなる部分もありましたが、そこがまさに「洗脳」の恐ろしさだと思います。本当にtoshiが無事にもどってきてよかったと心から思います。それにしても、この守谷香とMASAYAって人、かなり頭がおかしいし狂ってます・・・というか、これ犯罪にならないんでしょうか?(怒) 洗脳 地獄の12年からの生還 関連情報
当初、この本が出版された時、書店で興味のある見出しを少し読んだだけで(あぁ…これはヒドイ)と、思わされた。その位、toshlの受けてきた虐待は凄まじい。MASAYAや守谷香の暴力ないし、言葉の虐待は、想像を絶するものであり、スターダムにのし上がった人間の自尊心を粉々に打ち砕き、それでも足りないと無理矢理立ち上がらせ、更に罵倒、暴力を振るうという、血の通った人間のする行為とは思えない様なものだ。これを読んで(TOSHI何やってんの?そんな馬鹿な連中からはさっさと離れて、足を洗えば良いのに…)と思う人もいるかもしれない。しかし、そういう思考の回路を断たれてる、考える事を許さないのが洗脳というものの怖さではないだろうか。僕はこれを読んで、toshlという男にほのかな親近感すら感じた。僕自身にもこういう心の弱さはあるし、同じ状況になったら、僕も分からない…と感じたからだ。ロックスターになった男がこんな本を出すなんて相当勇気がいっただろうし、ある意味、恥部を晒す恥ずかしい行為かもしれない…しかし、彼の様な著名人がこういう行動をとることによって事前に救われる人もいるかもしれない…と思えば、大変意義のある一冊とも言えるのではないだろうか。思えば元メンバーのTAIJIにしろ、hideにしても何かXのメンバーには破滅的な傾向がある。「破滅に向かって」行った先には「死」があるのみ…。toshlも自尊心を蹂躙され、精神的に殺された様なものだと思う。ただ生きてるだけでは、人間と言えるのだろうか…健康的な身体、自分を尊重する自尊心、自負心があって初めて人は健全な生き方が出来るのではないだろうか。僕もそういう苦しみを味わった事があるし、そこから立ち直るのには時間と自信が必要だ。toshlは今、Xのメンバーとして復帰して、精力的に活動を行っている。そういった一歩を大切にして、人としての心を回復させていって欲しいと思う。 洗脳 地獄の12年からの生還 関連情報