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食肉偽装 震える牛

食品・流通業界の暗部を背景に、「迷宮課」の様な部署に属するノンキャリア(だが有能)のベテラン刑事が2年前に起こった殺人事件の再捜査を手掛ける過程で、その暗部に迫って行くという体裁の物語。作者は、巨大ショッピング・センターが日本の原風景を壊してしまった事、業界が自らの利益のために消費者を欺いている事などに"強い憤り"を抱いている様で、その熱い思いがヒシヒシと伝わって来た。それでいて、筆致はあくまで丹念かつ簡潔。この種の小説にありがちな、力の入れ過ぎ、と言った感は全く覚えなかった。特に、物語の進行の邪魔とならない様に配慮しながら、業界事情に通じていない読者にも、自然な形で背景を分かり易く説明するその手腕には感心した。本作は言わば、特定業界の暗部を抉った社会派小説と警察小説とを融合したものではあるが、そうした区別を感じさせない程に両者が一体化している。作品として非常に練れている印象を覚えるのである。特に、ベテラン刑事が政治的圧力の下で、コツコツと1つ1つ問題を掘り起し、解決へと導いて行く過程は読み応えがあった。犯人の計画が杜撰過ぎるので、ミステリ的に素晴らしいという訳ではないが、これを瑕疵と感じさせない充実した内容である。これと対照的なのが、作中に登場するオーナー経営者の大甘の二世ボッチャンで、こうした点からも作者が社会をどの視座で見ているかが窺える。また、ベテラン刑事とその妻及びベテラン刑事に心酔している後輩の一種の家族小説の趣きを呈している点も微笑ましい。そして、この家族のあり方は、オーナー一家との対比(皮肉)ともなっているのだ。骨太の社会派兼警察小説で、近年の収穫と言って良いのではないか。 震える牛 関連情報

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派遣社員という名の下の使い捨て労働者問題を扱った作品は数多くありますが、 作者曰く「取材するうちに『ここまでひどいことになっているのか』と。思っていたよりもはるかに、日本の産業は傷んでいました」 『こんなにひどいことに?』と驚いてくれる人もいるでしょうが、『こんな甘いもんじゃねえよ!』という人もいるはず。働いている人の4割がすでに非正規雇用ですからね」というくらいに、非正規雇用が当たり前になってきた日本ということはモラルもレベルも下がるのは必然ですよね そして、家電メーカーならまだしも命を預かる自動車メーカーの品質管理のモラルとレベルが下がるというのはもう命より金という情けないを通り越して恐ろしい世の中になったものだと実名はあげられませんが ハイブリッドカーの例の車 実は買おうか?と思ったことあるんですよ そうしたら保険会社の方にとめられました低燃費のためにとにかく車体を軽くするために安全性をまったく無視している事故による死亡率軽自動車どころじゃないからって まさしくそのことが書かれてました知っている人は知っている、公然の秘密なんでしょうか?『震える牛』もそうですが自分を守るのは自分だけなんだと つくづく思いました ガラパゴス 下 関連情報

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日本家電のガラパゴス化の末路を私たちは知っていますが、車の世界でも同じことが起こっているのですね。日本製品は安全・高品質という共同幻想の下、私たち日本人は諸外国に比べ割高なガラパゴス製品を買わされているわけです。車という日本の基幹産業にまでそれが及んでいることを、本書で知りました。本書は就労人口の3割(今や4割?)といわれる非正規労働者の実態をあぶり出していますが、真面目に働いているのに生活していけない人というのはこれからもっと増え続けるのではないかと危惧しています。人もモノも、余剰の時代なのです。新興国の低賃金労働が先進国にもおよび、ロボット化が促進し、人々の二極化がますます進むでしょう。暗澹としてしまいます。 余談ですが、正社員もひどいものですよ。人員削減で一人一人の仕事の量やノルマが増え、うつ病患者が全職員の10パーセントになった職場を知っていますし、私が勤めていた編集プロダクションは、右も左もわからない新人を、編集者なのだからうちは裁量労働制を採用してます、といって残業代をいっさい払いませんでした。先輩より後に出社するわけにいかず、結局10時前に出社して帰りは毎日終電―なのに残業代はゼロなんですよ。私は経理をしていましたが「ボーナス出たって喜んでるけど、それ、毎月払うべき残業代の3ヶ月分にもならない額だよ」と言ってあげたい気持ちでいっぱいでした。ちなみに事務系派遣社員のピンハネ率は当時50%、交通費の支給はなし。これ、女衒商売と同じじゃないと思いましたね。社会保険に入ってあげたり、いろいろキャリアアップのセミナーを開いてあげたり、派遣会社は福利厚生を充実させていることをアピールしたいのでしょうが、このピンハネ率じゃあたりまえのことやってるだけじゃない。儲かってるんでしょうねぇ。閑話休題。本作はいわゆる警察小説ですが、スーパーヒーローがいるわけではありません。しかし地道な地取り、鑑取りで事件の真相に肉薄していく中年刑事田川は魅力的で、共感を覚えました。 ガラパゴス 上 関連情報




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