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中国人民解放軍の実力 (ちくま新書)

中国人民解放軍の「実力」と銘打っているがかの国の軍事的実力をつぶさに数値化した本ではない。その全容は通読したところで決して明らかにはならないが徒に恐怖心を煽るわけでもなく、旧式兵器が多いからとむやみに張子の軍隊だと決め付けるわけでもなく漏れ伝わってくる各種コメントと各種内部テキスト・資料、そして足でこつこつ集めた情報を照らし合わせながら公式発表だけでは雲を掴むような実態に対し少しでも焦点をあわせようと苦労している一冊。これというスクープがあるわけではない地味な本だがジャーナリストらしい良心は存分に感じる。 中国人民解放軍の実力 (ちくま新書) 関連情報

こんなに弱い中国人民解放軍 (講談社+α新書)

　「こんなに弱い中国人民解放軍」が日本帝国陸海軍に相似形だと述べる著者の検証には納得するものがあった。　戦力の最先端能力に欠ける中国軍だから日本は強気の外交努力をしなければならない、と著者は本書で終始述べている。　皮肉にも中国春秋時代に書かれた孫子の兵法書に「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という名言があるが、現代の中国軍指導者層が孫子の名言を全うし、己の戦力を認識しているか本書を読み終え危惧してしまったのである。　旧日本陸海軍が、統帥権を標榜し文民統制の枠外で戦争に突き進んだ歴史的事実と対比してみると、今の共産党政権が果たして自国の軍隊を統帥しているとは思えないような事例が多くあり危うさを覚えてしまうのである。（本書でも著者が具体例を詳しく記述していたが・・・。）　恐れるのは狂気の中国軍指導者の暴発であろうが、こと中国だけに非ず、日本にとって「北朝鮮の核の脅威」という状況も存在するのである。　これは日本にとってのキューバ危機であるとも言えるのではないだろか。　「中国人民解放軍など恐れるに足らず」と、戦力の差を指摘しながら著者は説いているが、「nuclear blackmail」（核の脅し）は厳然として存在し、評者が先に指摘した北朝鮮のほうが今の日本にとって中国以上に頭が痛い問題ではないだろうか。　中国人民解放軍戦力が劣っていると、本書を読み知識として頭に入っても「あ~、そうですか」と、安堵するには程遠い気持ちで本書を読み終えました。 こんなに弱い中国人民解放軍 (講談社+α新書) 関連情報

人民解放軍と中国政治―文化大革命から鄧小平へ―

著者はソウル大卒業後、東京大学で博士号を取得し、現在は青山学院大准教授。中国政治が専門。本書は博士論文を基にしたもので、文化大革命期の中国において人民解放軍の主導する統治システムがなぜ出現し、それがなぜどのようにして消滅したか、というパズルについて答えようとしている。共産党の国では、軍が政治に介入することは実は珍しい（党の優位が確立しているのが普通）。しかし、文革期中国においては、解放軍が介入する領域が拡大した。その拡大は1969年から起こっていたが、1975年から軍の政治関与は少なくなり、1979年ぐらいには終了した。この推移と理由を考察するのが本書の目的。具体的には、比較政治学の視点で合理的選択を行う独裁者の目指すものを定義したうえで、独裁政治の実質を変化させ重要な役割を担うものとして、指導者の政治的決定を社会において実施、執行する能力を規定する「執行の制度」という概念を提唱する。また、制度変化の概念（グライフなど）の理論を紹介。そのうえで、上記パズルの答えは、独裁者である毛沢東が、政治的生存の保持や自分の目指す社会秩序の実現を目指すために、解放軍に政策執行主体としての地位と権限を賦与した制度選択の結果であるという。一方軍部統治の解消は、軍隊整頓の執行権限を鄧小平に委譲したことという。またその過程で発生した中越戦争において、鄧小平が目指した軍隊整頓の論理が貫徹されており、またその必要性が裏付けられたとしている。比較政治学の枠組みで、文革を分析しようとした野心作です。両方の予備知識が必要なので、なかなか骨がありました。特に制度の変化とかの議論をどう当てはめているのかは完全には理解しきれなかったところです。ただケースとしてこの時代に何が起きていたかを知ることができるという点だけでも面白く、また中越戦争の解釈は興味深かったです。 人民解放軍と中国政治―文化大革命から鄧小平へ― 関連情報

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