林静一 ランキング!

林静一 赤色エレジー [DVD]

 懐かしの名作劇画の映像化。冒頭、壮年の男性(原作の漫画家であり本作の監督でもある林静一さんらしき姿かたちの人物)が、かつての4畳半を訪れ過去を振り返るというシークエンスから物語は始まる。しかし、林さんご自身は原作を描いていた当時には同棲経験がなかったそうで、また、主人公のように東北が故郷でもないとのこと。林さんも職業アニメーターであったことから、『赤色エレジー』があたかも私劇画であるかのように「誤解」(もっとも林さん自身それを楽しまれているように見えるけれど)されることも多いようだが、この物語は案外クールな視点から描かれているように思う。物語を断ち切るかのような、ラストシーンでの「幸子」の所作―全編新作の絵そして色彩―が本当にすばらしい。 赤色エレジー [DVD] 関連情報

林静一 連句アニメーション 冬の日 [DVD]

ノルシュテインの「発句」が絶品。朗読の三谷昇の枯れて渋くてまるで江戸時代に迷い込んだような声に一瞬驚く。「脇」の川本喜八郎も同じ。岸田今日子のぬめりのある肉感的な声の表現力は「表情」という視覚的表現力を越えている。次の、大井文雄の若者の歩き姿は「いなせな」という言葉をこれほど現わしたものはないという程だ。柏木隆太の朗読も素直であるけれども年輪を感じさせるものである。以下、印象に残る映像。基準は、アイデアとイメージと透明感。福島冶、島村達雄、奥山玲子・小田部羊一が秀逸。アレキサンドル・ペトロフはまるで日本人であるかのよう。片山雅博のアイデアは面白い。マーク・ベイカーも透明感がありアイデアが秀でている。高原勲は日本画の傑作が動いているようだ。素晴らしい。最後の「挙句」は再び川本喜八郎。この企画の発案者であり実行者である。 連句アニメーション 冬の日 [DVD] 関連情報

林静一 夜にほほよせ(若松孝二傑作選外伝6)(期間限定価格盤)

林 静一と言えば、切ない男女の同棲生活を描いた「赤色エレジー(1970年)」。 「赤色エレジー」と言えば、この漫画に触発されたあがた森魚が1972年に発表したメジャー・デビューにして大ヒット曲。そして、当時からあがたと活動を共にしていたのが「はちみつぱい」。その「はちみつぱい」が、林 静一が監督を務めた唯一の実写映画「夜にほほよせ」の音楽を担当したのは、当然と言えば当然。しかし、それは、林とあがたとの繋がりからではなく、周囲のスタッフの意向であったそうです。ちなみに映画の製作者は、あの若松孝二監督。映画の公開は1973年4月。「はちみつぱい」のファースト・アルバム「センチメンタル通り」のリリースが同年11月なので、これは鈴木慶一、武川雅寛、かしぶち哲郎らを擁し、後にMoonridersに発展する日本のロックを語る上で欠かすことのできないバンドによる、初期の重要な音源ということになります。サントラといっても、林が作詞し、主演のかしわ哲が作曲した主題歌「夜にほほよせ」の7つのヴァージョンが収録されているのみ。 当時、かしわはシンガーソングライターだったらしいのですが、1981年には、何とうたのおにいさんとしてNHKに登場したとのこと。さて、かしわの歌声は素朴で、複雑な男女関係を描いたという映画の雰囲気に合っていたかどうかは不明ですが、やはり聴きどころは「はちみつぱい」の演奏、それもとりわけ武川のヴァイオリンであり、この哀愁に満ちた響きこそ、その後のあがたやMoonridersの音楽を支え続けた重要な要素であったことが、この音源にもハッキリと証明されています。 夜にほほよせ(若松孝二傑作選外伝6)(期間限定価格盤) 関連情報

林静一 林静一美人画集

この『林静一 美人画集』は林静一さんの生誕70周年記念に出版された画集です。上品な淡い背景にくっきりと浮かび上がる、和装姿に横顔の美人画は林さんの定番ですが、同時に作品に込められたタイトルも素敵な響きを持ったものばかりです。日本人に忘れ去られようとしている美しい日本の四季折々の風習や所作、言葉遣いまで女性画を通して伝わってくるかのようです。小道具や着物のデザイン、日本固有の草花など細かい部分にも気配りの行き届いたものですが、加えて背景と人物のバランスや構図にも目を留めてしまいます。古い作品集で知り覚えた作品であっても、画の並びや編集の流れ、そして現代の印刷技術で林さんの美人画が鮮やかな趣を持ったものになっています。主なタイトルの判明している掲載作品は以下の通りです。夢見花 1970おてだま 1995女と 2002ちとせあめ 2000ひなあそび 1998立ち姿三姉妹 1996春草(とタンポポ) 1995お茶の時間 1995ひととき 未詳十九の夢 1990年代夢桜 1992早春 1991花火 1989つばめ 1992山茶屋 1989月見 1989もみじ 1992冬の心 1991桜子 1980ねこと紙風船 未詳憂い 1982夢の蝶 1978ふっ 1979春のかおり(春の詩) 1980年代黒 1986ラブ・レター 1991花嫁お月さん 1978雨ふりお月さん 1990儚夢 1978浅い夢 1980浜木綿 1979白檀 1977少女 1979千代紙人形 1978初恋 1978あやとり 1970うたた寝 1970年代心景美人画 1976夜会 1989少女 1995おとしもの 1989KAORU 1992MIKI 1992REIKO 1992想夢曲 1991山道 1988ふるさと 1989いろり 1988ジグソー・パズル 1980買いもの 1970夏草 1980年代山小屋 1980ベニス 1980ニース 1980ヨット 1981クリスマス 1981まちわびて 1982コール・ミー 1978蜜の味 1970年代夢の先 1982女と 1983潮騒 1978たばこ 1980みつめて 1979夏の調べ 1991恋手紙 1988天までとどけ 1980思い出 1978おもい出さないおもい出 1977近年の「書店経営」表紙画や仙台の名菓「萩の月」のパッケージ装画、あるいは画自体はちゃんと残っているにも関わらず作品名や制作年のはっきりしないものもそのままの形で掲載されています。注目は、室生犀星の世界に挿絵を描いた「リリー・マルレーン」のように原画自体が失われてしまっている作品もその一部を執念で復刻がなされています。他にも怨霊血染めの十字架(発見の会)と邪宗門(演劇実験室・天井桟敷) の70年代初頭のポスター画が二点と、当時提供されたレコードジャケット画や一連の寺山修司作品の角川文庫の表紙を飾った書籍画、ロッテの雑誌広告の宣伝用に連載された2006年の「小梅の初恋絵草紙」全15話を見ることができます。少し意外だったのは、2014年にLampという日本の音楽グループのアルバム『ゆめ』のジャケット画に提供した作品が掲載されていなかったことでしょうか。構図や雰囲気は1983年の「女と」に少し近いものはありますが、現在の優れた作品をぜひ収めてほしかったです。最後に掲載されている対談はかなり専門的な内容も含まれています。その中でも考えさせられたのは、圧倒的に美しい江戸時代の春画の世界を再評価した海外へその種の画を描きたい旨を伝えると断られるという奇妙な事情です。この画集には掲載されていないのですが、女性のヌードに対して普遍的な画題と捉えて描いた「ph4.5グッピーは死なない」のニュアンス、例えばこの画集では1982年の「夢の先」の発展形のような方向性がまだ手付かずのままだというのは現況の美術界において大変な損失であるように感じました。それから着物の考案まで行う林さんが目の当たりにした、慶長縫箔という国宝級の技術を気軽に作品に応用できない敷居の高さと縄張り意識の介在は、一個人のもどかしさや不満以上の現代美術の発展を阻害する出来事でしょう。恐らく同業者にとってはその意気込みを含めて色々と得るところが大きいはずです。何よりも、作りたいものが作れない、描きたいものが描けないことほど不幸なことはありません。まだまだ新作へ果敢に挑戦する林さんの、作品鑑賞からだけでは掴めない事柄が、この画集の林さんの言葉の端々から伝わってくると思います。 林静一美人画集 関連情報

林静一 夜にほほよせ(若松孝二傑作選外伝6)

林 静一と言えば、切ない男女の同棲生活を描いた「赤色エレジー(1970年)」。 「赤色エレジー」と言えば、この漫画に触発されたあがた森魚が1972年に発表したメジャー・デビューにして大ヒット曲。そして、当時からあがたと活動を共にしていたのが「はちみつぱい」。その「はちみつぱい」が、林 静一が監督を務めた唯一の実写映画「夜にほほよせ」の音楽を担当したのは、当然と言えば当然。しかし、それは、林とあがたとの繋がりからではなく、周囲のスタッフの意向であったそうです。ちなみに映画の製作者は、あの若松孝二監督。映画の公開は1973年4月。「はちみつぱい」のファースト・アルバム「センチメンタル通り」のリリースが同年11月なので、これは鈴木慶一、武川雅寛、かしぶち哲郎らを擁し、後にMoonridersに発展する日本のロックを語る上で欠かすことのできないバンドによる、初期の重要な音源ということになります。サントラといっても、林が作詞し、主演のかしわ哲が作曲した主題歌「夜にほほよせ」の7つのヴァージョンが収録されているのみ。 当時、かしわはシンガーソングライターだったらしいのですが、1981年には、何とうたのおにいさんとしてNHKに登場したとのこと。さて、かしわの歌声は素朴で、複雑な男女関係を描いたという映画の雰囲気に合っていたかどうかは不明ですが、やはり聴きどころは「はちみつぱい」の演奏、それもとりわけ武川のヴァイオリンであり、この哀愁に満ちた響きこそ、その後のあがたやMoonridersの音楽を支え続けた重要な要素であったことが、この音源にもハッキリと証明されています。 夜にほほよせ(若松孝二傑作選外伝6) 関連情報




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