宇月原晴明 ランキング!

宇月原晴明 信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)

 今までの信長像を払拭させる新たな見解で信長を語った物語。今までの信長についての謎が恐ろしいほどしっくりとくる解釈で解き明かされ、幻想的な新たな歴史観を作り出しています。遠く異国の地の統率者と信長を結び付けている点や、二十世紀半ばの視点から信長を見ている点がこれまでの信長小説にない、いい味を出していると思います。読み終わったあと、信長の偉大さを感じ、言葉に出せない信長の魅力をさらに大きくしてくれる本です。 信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫) 関連情報

宇月原晴明 かがやく月の宮

何故に石作皇子萌え、だとか。天帝の座す道教系の天人達であるはずが、何故に菩薩来迎図なのか、とか単純比較しただけでも作り手達の意図の違いが見えて面白いという点もございますが、何よりも本作、映画と同じく、話したこともなければ、そもそも互いの顔も知らずに惚れた、腫れたを繰り広げる上古の習慣を最大限に生かして、かぐや姫サイドのお話をバッサリ省略。その空ろな中心を取り巻く、五人の求婚者と帝の物語になっているからなのでございます(だから丁度、映画と対になってるわけで)白村江以降の飛鳥・白凰時代を五年ぐらいに圧縮した結果、巨大イベント目白押しの極彩色の大決戦と化した乱世にありながらも、なすべきことはすでになく、何故か不比等の兄貴(ゆえに、車持皇子=不比等説はスルー)がでかい面で采配する宮中に置物の狸のように座しながら、激変する事態を静観せざるえない彼らの鬱屈と焦燥。あとはふざけ散らして、それでも誤魔化しが効かなくなった時点で死ぬしかない、永遠の笑いの刑を受けながら、/微笑むことは許されぬ/絶望的な物狂い。よもやあの間抜けな婚約者達にこうも深く寄り添う物語があろうとは、誰だか知らない原作者だってびっくりでしょう。モデルと目される源融や作者に擬せられる紀貫之(ちゃんと女になってる)がちゃっかり顔を出していたり、わざわざ宇治拾遺からデブの痩せないダイエットを引っ張って来たりして作者が楽しんで書いているのがよくわかります。が、楽しみすぎて草壁皇子と文武天皇(軽皇子)がイイ感じに混ざった帝が高丘親王そのまんまになってしまったのはご愛嬌。またか、どんだけ高丘親王好きやねん。と突っ込むのも野暮というもので、ここはそのさらなるネタ元、「右大臣実朝」に 「自分は夢の中に遊んでいるのだろうか」 と、コクトーから引用した故実相寺昭雄の言葉がこのお話を彩るに相応しい気がします。ありもしない「かがやく月の宮」から、あるかなしかもわからぬ「かがやく日の宮」へ合わせ鏡の織り成す空ろな迷宮の如き、うつろでうつろでうつろでうつろな空言でおじゃります次は死者の書ですかね。 かがやく月の宮 関連情報

宇月原晴明 聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ) (新潮文庫)

面白い!「信長 戴冠せるアンドロギュヌス」とはやや趣が異なります。魔性の織田一族と結びつくキリスト教の異端。信長に魅せられた秀吉・家康。それぞれが放つ乱破たち。秀吉の養子・秀次に拾われた少女。秀次に仕える不気味な男・・・。他の時代小説には類を見ないなにかがあります。 聚楽―太閤の錬金窟(グロッタ) (新潮文庫) 関連情報




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